九州旅行-2005秋 その3 農業編

さて、先生のところの主要農産物はコメ、しいため、ぜんまい。それに、スギとヒノキかな。
肥料や農薬などは合理的な使い方をしているものの、基本的には昔ながらの農業を踏襲している。しばらくは村の中でもで口を出さずに、村でのやり方を学んでいかれるそうだ。
果たして昔ながらの農業で生活を成り立たせることができるのだろうか?
いや、生活していくだけなら食べるものには困らないし、十分かもしれないが、まだ小学生の2人のお子さんを育てていくとなるとそう簡単ではない。(まことに失礼なことを言いたい放題で申し訳ありません・・・)

コメとぜんまいはすでに昨年から収穫出来ているが、どちらも規模が小さい。ぜんまいの畑というのは見たこともなかったが、手で摘んで収穫するしかなく、あく抜きなどしないと食べられないので、結構な高値で売れるものらしいがあまり規模を拡大するわけにも行かないようだ。

おコメの方は、山あいなのでもともとの土地が狭い上に、段々になっていて効率を上げるのは難しそうだ。しかも、一通りの機械の類も各農家でそれぞれ所有していて、これでは減価償却にメンテナンス代だけでも大変なのではなかろうか。先生のところではいずれ作付面積を今の5倍程度に増やされるそうだが、農地の売買、貸し借りも容易ではなく、村で実績を積んでみんなの信頼を得ないと勝手には増やせないそうだ。しかし5倍に増えたとしても、自分が通勤途中に見かける茨城の田んぼの広さからするとはるかに小規模。新潟やら北海道、あるいはいずれは海外の大規模農家と同じ土俵で勝負するのは無理があるよなあ。大企業と小さな地酒メーカーなども同じような感じだろうか。

ちなみにコメ価格センター(http://www.komekakakucenter.jp/)での最新(2005.10.24 17年産)の入札価格は、
全体の平均が15243円/60kg(2450円/10kg)、
最も安いのは北海道・ほしのゆめ12600円/60kg(2100円/10kg)
最も高いのは魚沼・コシヒカリ23008円/60kg(3834円/10kg)
ちなみに大分・ヒノヒカリ14302円/60kg(2383円/10kg)
となっている。(包装代、消費税、送料を含まない)

今年はうちの隣のスーパーで売っているおコメも異常に安い。
新潟・コシヒカリは18300円/60kg(3050円/10kg)のはずなのに、なんと2980円で売っていた。3050円/10kgというのは卸価格で、消費税も包装代も送料も含まない値段のはずだから、とんでもない原価割れだと思うのだが、どうなっているのだ??
新潟だけは今年からは品種を変えていて(表示はコシヒカリのまま)DNA鑑定もできるようになって産地偽装もできないはずだし。
実際の卸値は入札価格よりもさらに低くなっているということだろうか。そう言えば、全農秋田が架空取り引きで入札価格を釣り上げたとかで逮捕者が出ていたな。とにかく、一般に流通させたのでは、大規模農家でも補助金なしでは厳しいのが現状だろう。小規模農家であれば、何とか差別化して直販で高く売っていくしかない。

ネットで直販している農家を調べてみた。(精米10kgあたり+関東地方への送料とURLを文末にのせておいた。パッと調べて出てきたものを順不同でのせただけで他意はありません。)
精米10kg送料込み価格だと、だいたい5000-7000円くらい。魚沼だけは飛びぬけていて1万円超。HPを見ているとそれぞれ何とか特徴を出して差別化しようとがんばっているのがよくわかって面白い。
直販でさばくことが出来るなら農協に卸す場合の倍くらいの値段はつけられるということだ。買う側としたら20-80%程度の付加価値を見出しているということか。

ちなみに先生のところでは他の直販農家に比べるとずば抜けて安く、3333円/10kg、送料込みでも4333円/10kgとスーパーで売っているものとほぼ同等の値段になっている。

普通の田んぼの用水路などを見るとどぶみたいになっていて、ちょっとやだな〜、という感じがするが、先生のところは魚がたくさん泳いでいるのが見えるきれいな小川から直接田んぼに水を引いている。朝晩の寒暖差も大きく、おいしいお米の出来る条件がそろっているといえる。また、コシヒカリの平均的な収量が523kg/10aなのに対し、はやしファームでは420kg/10a。かなり貴重なおコメなのだ。

実際少し頂いてきたのをうちで炊いてみたが、炊飯器をあけたらおコメがものすごくつやつやしているのにびっくりした。お米のつぶつぶがしっかりしていて、歯ごたえ十分。
おにぎりにしたらさぞかしおいしいだろうと思った。
うちでは忙しさにかまけて、大体冷凍にしたご飯をあっためて食べているので、炊き立てご飯なら何でもおいしく感じてしまうのだが、念のために次の日普通のおコメを炊いてみたら、やっぱりあのつやはない。
あまりこだわって食べていないうちには少々もったいない代物だ。値段的には安すぎるくらい。消費量が少ないので大量のコメを狭い部屋に置いておくのは少々大変ではあるけど、せっかくだから在庫のあるうちに注文させて頂いた。

個人的には売り切れになってしまうと困るからあまり宣伝したくないけれど、先生にとってはまずはたくさんの人に食べてもらって顧客が増えることが重要だし、ってことで、
こちら(http://homepage3.nifty.com/kunisaki-hayashi/rice-hanbai.html)から注文できます。
5−30キロ、玄米から無洗米まで、個別にいろいろ対応してもらえるようです。

さて話は戻って、しいたけ。
実はこれが一番の収入源になるようだ。
しかし、これは収穫までまだ時間がかかる。
クヌギ林を育てて15年、林を切り出して菌を植付け2-3年寝かせ、木をばらして家の近くで組みなおしてしいたけが出てくるのを待つ。
しいたけが出てくるようになるとと3年くらいは収穫できるらしい。
つまり何と、20年先を考えながら作業をしていかなくてはならない。
八王子に住んでいた時も裏山でシイタケを作っているのを見ていたが、見ていたのは最後のシイタケが出てくる瞬間だけだったのだな。その前にそんなに時間と手間がかかる作業があるとは考えていなかった。
(ただし、スーパーで売っている安い生シイタケ栽培の場合は、こまをほだ木に大量に打ち込む事ですぐに収穫できるようになるらしい)

スギやヒノキは50年先を考えて作業しなくてはならないし、時間のスケールがものすごく大きい。
農作業だけでなく、村のお祭り当番も100年に一度回ってくるそうだ。そして当番に当ると、何と15年間も当番が続く・・・

なるほど、畑の仕事だけならともかく、山の仕事をするとなると、定年になってからなんて悠長なことは言っていられないのだな。体力のいる仕事だし。

先生のところは、お父さんが作った山があるので数年後にはシイタケの収穫が出来るようになるそうだ。
むかし、取れたてのシイタケをその場で焼いて食べたあの味が忘れられず、今回も食べられるかなあ、とひそかに期待していたのだけれど、数年後にまた出直しだ。

しいたけが収穫できるようになれば農業だけで十分な収入が得られる見込みらしいが、労働に関していえば先日読んだ本のような優雅な田舎暮らしとはほど遠い感じだ。
春はぜんまい、夏は稲作、秋から冬は山の仕事で農閑期というのはない様だし、雨の日は休めるのかと思いきや、収穫物を乾燥させるなどの屋内での作業が待っているとのこと。

自分でどう働くか決められて、働いた分だけ返ってくるという楽しさはありそうだけど、働き者じゃないと成り立たないし、まさに体が資本。
しかしあれだけいい環境で農作業をしたらすっごく健康になれそう。1週間くらい山の仕事を手伝いにいけたら、きっとどこかに旅行に出かけるよりずっといいリフレッシュになるだろう。
実際先生も東京にいた時よりずっと生き生きした感じだった。ふと気がつくと炭酸飲料を飲んでいるのは相変わらずだったけど、相当健康体になったのではなかろうか。
素人のへなちょこが手伝いに行って、果たして役に立てるのかわからないけど、いつか実現したい。

先生のところは先祖代々、あの土地で農業を営んできて、人間関係も土地も家も設備もある中に戻ったわけで、田舎と縁のない人がマネして農業を始めようと思っても、あまりにハードルは大きい感じがする。あの村でも先生が一番の若手になるのだそうだ。
先生には是非とも「普通に農業やっても、ちゃんとやっていけるんだ」という成功事例を作ってもらって、さらには若い人が農業を始められるような環境を作ってもらいたいな。
先日読んだ本のようなインパクトのある夢物語にならなくていいから、労働の実態と農業の収支を具体的に明かしてもらえると、きっと農業という職業に対するイメージが湧きやすくなる。・・・けど、自分の労働の実態と収支を公開せよというのはやっぱ無茶な要求ですかな。

先生の構想には、第一線で活躍している研究者達を国東に呼んで、農家の人たちとの交流の場を作るというのがあるようだ。
確かに、研究者の多くは農業の現場と接点がない。一方で農業に携わっている現場の人たちもどんな研究が行われているのか知る機会がない。うまく交流が図れれば双方が得られるものは大きいだろう。
ただ、研究者と農家の人が同席しただけでは交流するのは難しい。お互いどの程度の知識があるとか、どのようなことに興味があるとかもわからないし、そもそも方言すら通じなくて会話にもならないかもしれない。
研究の第一線で活躍した経験がありながら専業農家として地域に溶け込んで、双方の立場、考え方を理解している先生の橋渡しとしての役回りがまさにカギとなるに違いない。

先生の具体的な構想を聞いているわけでもないし、農家の人に会ったわけでもないので、ここからは個人的な空想になるが、やっぱり研究者がやってきて講演をするというスタイルでは交流を深めるのはなかなか難しいという気がする。研究者側が話をするのはともかくとして、農家側から体系化されていない経験的な知恵を引き出すのは、話をするだけでは難しそうだ。先生自身も森林組合での作業などを通じて少しずつ農家の人から話を引き出していると言っていたように、まずは研究者側が農家の人といっしょに農作業をする中で、少しずつ農家の人の知恵や、興味のあることを感じ取り、最後に自分のやっていることを紹介して、あとは酒席でお互いざっくばらんに話し合う、と言うスタイルはどうだろう。
問題は農作業をする期間。あまり短くて小学生の田植え体験みたいになっちゃ意味がない。自分も学生の頃にやった一日農業実習では農業が分かった気にすらなれなかったし。
せめてごく少人数で1週間くらいは欲しいところだが、1週間もかけるというのは、仕事を持っている人にはちょっと現実的ではないかもしれない。しかし、若手研究者のワークショップと言うか、合宿のような形だったらそれなりに現実味ありそうだぞ。研究者同士の交流にもなりそうだし。農家の側も若手が中心になってくれたら盛り上がりそうだ。

本当の相互交流と言う意味では、情報を交換するだけじゃなくて、先生のように研究者から農家に転身したり、逆に農家から研究者に転身することが可能になったら、それこそ本当に新しい価値が創造される気がする。
定年になったら年金をもらいつつ田舎で自給自足の生活をしたい、と言うような話はよく聞くけど、体力からすれば若いうちにバリバリ農業をやって、年をとったらその経験を基に研究をしたり、知識の体系化をするって言うほうが自然かもしれないぞ。
他の職業でも転職はそう簡単ではないものの、それなりに多彩なキャリアを持つ人はたくさんいるのに、農業の場合はなかなかひとつのキャリアとして、出たり入ったりするのが難しいのが問題だ。農業を始めるというと、もうそこに骨をうずめる覚悟が必要そうだもんなあ。
研究者と農家の間の転身に限らず、農業がひとつの転職先、キャリアとして選択できるようになったらおもしろいと思うんだけどな。

話がとめどもなくなってきたので一旦終了。

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以下、ネットでお米の直販している農家。
(精米10kgあたり+関東地方への送料)
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北海道・ほしのゆめ(ふれあい体験農園みたむら)
4000円+850円=4850円
http://www1.ocn.ne.jp/~m-tomato/

北海道・ほしのゆめ(黒川農園)
3800円+1060円=4860円
http://rankoshi-mai.com/index.htm

宮城・コシヒカリ(いのまたさん)
7300円(送料込み)
http://www.ceres.dti.ne.jp/~innoinno/kome/

宮城・ひとめぼれ(みのり農園)
5555円(送料込み)
http://members.ld.infoseek.co.jp/ishizawa_h/

大潟村・あきたこまち(角田農園)
6500円(送料込み)
http://w2.amn.ne.jp/~oogata/

山形・コシヒカリ(ファームインビレッジ)
7560円+1000円=8560円
http://www.mountain-j.com/farm/

庄内・コシヒカリ(斎藤農場)
6600円(送料込み)
http://www.comeya.net/

福島・コシヒカリ(福島やまろく)
7665円(送料込み)
http://www.d1.dion.ne.jp/~entsu/

茨城・コシヒカリ(シゲタファーム)
3600円+900円=4500円
http://www.shigetafarm.jp/index.htm

茨城・コシヒカリ(横田農場)
7900円(送料込み)
ゆめひたち5100円(送料込み)
http://www.yokotanojo.co.jp/

茨城・コシヒカリ(鈴木農園)
5500円+600円=6100円
http://www2s.biglobe.ne.jp/~kazu-s/index.html

新潟・コシヒカリ(カガヤキ農園)
無農薬9000円(送料込み)
5500円(送料込み)
http://www.kagayakifarm.com/

佐渡・コシヒカリ(清水農産)
6825円+1060円=7885円
http://www.sado.co.jp/simizu/default.htm

魚沼・コシヒカリ(農家利兵衛)
9100円+960円=10060円
http://homepage3.nifty.com/rihey/

三重・コシヒカリ(ほたるまい)
5145円+700円=5845円
http://www.e-net.or.jp/user/kitano/
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by hirommk | 2005-11-04 14:23 | travel | Comments(0)